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現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』

「Eliud Kipchoge Running Form ②」

現マラソン世界記録保持者キプチョゲ選手(ケニ
ア)のランニングフォーム分析の2回目です。

第1回の前回はキプチョゲ選手のランニング時
の姿勢や筋肉・骨格的特徴などを分析し、「背
骨の生理的湾曲を維持した前傾姿勢」や「大き
な胸郭」などについて解説しました。
今回は「生理的湾曲を維持した前傾姿勢」がベ
ースにあって可能となるキプチョゲ選手の様
技術について解説します。

まず、今回の内容の理解に必要な知識として、
前回の内容のキプチョゲ選手のランニングフォ
ームの特徴「生理的湾曲を維持した前傾姿勢」
について、簡単に復習します。

■脊柱の生理的湾曲とは
「脊柱(背骨と骨盤)の生理的湾曲」とは、脊柱
がゆるやかなS字状にカーブしている状態のこ
とで、背骨がカーブすることで直立2足歩行や
立位での運動ができます。
脊柱の生理的湾曲は「機能的に身体を動かす
めに重要な働き」をしています。
「解剖学的に正しい姿勢」であり「きれいな姿
勢」でもあります。
ねこ背・反り腰・首を前に倒すなどの姿勢は、
脊柱の生理的湾曲が崩れた状態です。
図1参照
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_20154567.jpg


  ※生理的湾曲についての以前の投稿
  (【背骨の湾曲】と【背骨の歴史】で解説)


■生理的湾曲を維持した前傾姿勢とは
前傾姿勢になる時に骨盤だけ前傾させて腰や
背中を反らしたり、背中を丸めて前傾すると
生理的湾曲は崩れてしまいます。
キプチョゲ選手は背骨や骨盤から前傾するの
ではなく、足首から全身を前に倒して前傾し
いるので、脊柱の生理的湾曲(背骨本来の
ーブ)を変化さずに前傾姿勢になって
す。

全身を前傾させると頭部も前傾するため、そ
のままでは目線は前下方になります。
そのため、頭部の角度を水平に修正する必
要がありますが、この頭部の角度のコントロ
ールを多くの人は首全体の後ろを反らして縮
めてしまい(頚椎の伸展)、頚椎の生理的湾曲
が崩れてしまいます。
キプチョゲ選手は首全体を反らすのではなく
環椎後頭関節(背骨の上端にある第1頚椎
と後頭骨の関節)だけで頭部の水平をコント
ロールしている(その下の環軸関節も少し動
きます)ので、頚椎も生理的湾曲を維持でき
ています。
図2参照
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_20162009.jpg


ここから今回の本題になります。
キプチョゲ選手の速く走る技術の多くは
理的湾曲を維持した前傾姿勢」が台に
あって可能になります。
今回はキプチョゲ選手の「生理的湾曲を維
持した前傾姿勢」と「速く走る様々な技術
」の繋がりに焦点を絞って解説します。

今回は「生理的湾曲を維持した前傾姿勢」
によって可能となる技術だけを抽出して解
説していますので、キプチョゲ選手の身体
の使い方については、次回以降に「脚の動
き」・「体幹の動き」・「肩甲骨や腕の動
き」・「呼吸」など、部位ごとに解説する
予定です。



■床反力の増加
「走る」「歩く」動きで前に出した足が着地
する時、身体が地面を押す力の反作用で地面
から押し返される力がかかります。
これを床反力といいます。
この床反力は身体を上に押し上げる力と身体
を水平方向に推進させる力からできています
床反力は身体を前傾させるほど身体を前進さ
せる成分が増えます。
図3参照
キプチョゲ選手はトップクラスのマラソンラ
ンナーの中でも特に前傾のフォームです。
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_20182855.jpg
身体の重心は第2仙骨前方(おへその少し下の
高さ)にあります。

身体の前方に踵(かかと)から着地する方法(
ヒールストライク)では身体重心の前方で踵
が地面を前へ押す力がかかるため、前進力に
ブレーキをかけることになります。
キプチョゲ選手は前傾姿勢で前方に移動した
身体重心の真下に足の裏で着地しています。
それによって前進力にブレーキを掛けずに
地面を強く踏ん張ることが出来ます。

ここまでを整理すると前傾姿勢及び前傾姿勢
によって可能となる着地技術によって次のよ
うな効果生まれています。
前傾姿勢で床反力の前進力成分が増加。
前傾姿勢で前方に移動した身体重心の真下
 に足の裏で着地できるので、前進力にブレ
 ーキとなる力が働かない
前傾姿勢で前方に移動した身体重心の真下
 に足の裏で着地できるので、地面を強く踏
 ん張れる。

キプチョゲ選手のように身体重心の真下に踏
ん張るためには、次の3つの要素が必要です。
1、前傾姿勢で身体重心が前方に移動
2、素早く踏ん張りきる(股関節と膝の伸展)
3、脚を素早く前に戻す(股関節と膝の屈曲)

もし、前傾が少なかったり、素早く踏ん張り
きれずにもたついたり、脚を素早く前に引き
戻せない状態で身体重心の真下に踏ん張れば
、前方に転倒してしまいます。

この3つの要素に関するキプチョゲ選手の技
術の多くが、今回のテーマの「生理的湾曲
を維持した前傾姿勢から生まれる技術」で
あり、今回の解説内容に含まれています。


■ストライドの増加
また前傾姿勢になることで、太ももを後ろへ
動かす(股関節の伸展)可動域が増えます。
これは前傾姿勢によって骨盤が前傾すること
股関節の運動軸が後方へ傾くためです。
太ももの後方への可動域が増えることでスト
ライド(2歩の歩幅)を広くできます。
キプチョゲ選手は股関節で太ももを最大可動
域まで後ろへ伸展しています。
それによって更にストライドが広がります。

股関節を最大可動域まで伸展できるのは、股
関節の柔軟性だけでなく、股関節の動きによ
って骨盤の角度がぶれることなく脊柱の生理
的湾曲を維持できているからです。

キプチョゲ選手のように脚を大きく後ろへ伸
展する動きは、その後に素早く脚を前に引き
戻せるから可能になります。

現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_20194852.jpg


■大腰筋の素早い動き
地面を踏ん張った軸足を前方に素早く戻す動
き(股関節の屈曲・フォワードスイング期)
でもキプチョゲ選手は前傾姿勢を上手く使っ
て最大限の効果を発揮しています。

太ももを前に持ち上げる動き(股関節の屈曲
)の主動作筋は大腰筋です。
大腰筋は股関節の屈曲動作の初期は力が弱く
、股関節を深く屈曲するほど徐々に力が強く
なります。

物体を回転させたい時、回転軸の近くを押す
より離れたところを押した方が小さな力で動
かすことが出来ます。
短い棒をてこにするより長い棒をてこにした
方が物を動かしやすいのと同じです。

回転軸と力の作用する位置との距離をモーメ
ントアーム(てこの腕の長さ)といいます。
大腰筋は回転軸となる股関節の近くを通るた
め、そのままではモーメントアームが短くて
トルク(回転させる力)が弱くなってしまいま
す。
大腰筋は骨盤前部を通過するところで腸恥隆
起(下の写真参照)に当たって前方に“くの字”
に曲がっています。腸恥隆起が張り出し滑車
の役割をして大腰筋は股関節(回転軸)から少
し離れてモーメントアームが長くなることで
トルクを稼いでいます。

そして太ももを前に持ち上げて股関節を深く
屈曲していくと大腿骨の小転子(大腰筋が大
腿骨に付着して力の作用する部位:停止部
位)が腸恥隆起より前に出てモーメントアー
ムがさらに長くなるので、大腰筋は屈曲する
ほどに少しづつパワフルになります。
前傾姿勢になるほど股関節は屈曲なるた
め大腰筋をトルクのある状態で使うことがで
きます。
下の写真参照
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_02111146.jpg
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_19412179.jpg
太ももを後方から前方に振り戻す初期(フォ
アードスイング初期)は大腰筋の力が弱い時
期です。
キプチョゲ選手は前傾姿勢と股関節の使い方
で、トルクの弱い時期の大腰筋にブーストー
をかけています。
キプチョゲ選手は大腰筋に力を入れる直前の
、軸足が身体の後ろで地面から離れる瞬間の
時期に、軸足を大きく後ろに伸ばしています
。(股関節を最大可動域まで伸展)
前傾姿勢により運動軸が後方に傾いた股
をさらに最大可動域まで後ろに伸展していま
す。
この時、太ももを大きく後ろへ動かす股関
の伸展によって大腰筋にはストレッチがかか
り力が蓄積されます。
さらに股関節を最大可動域まで伸展すると筋
肉が縮もうとする伸張反射が起こり、それに
よって大腰筋の初動のトルクの弱さを補って
素早く力が発揮できていると思われます。

太ももを前に持ち上げる時、大腰筋は初動の
トルクの弱い時期に重力に逆らって太ももを
持ち上げなければなりません。
しかし、太ももを大きく後ろに伸展してから
前方に動かす時は、太ももは持ち上げるので
はなく前下方に振り下ろす動きになります。
振り子が振り戻す時のように落下エネルギ
を使えるわけですが、キプチョゲ選手は前傾
姿勢による股関節の運動軸の後方への傾きに
加えて股関節を最大可動域まで伸展している
ので振り子の効果も大きく明確になります。

キプチョゲ選手が地面を踏ん張った軸足を後
方から前方へ振り出す時(股関節の屈曲)、初
動から素早く動きだして中盤でさらに加速し
ています。
これは初動の大腰筋の力が弱い時期は力の蓄
積からの放出・伸張反射・振り子の落下エネ
ルギーを使って素早く動きだし、大腰筋が力
強くなったところでさらに加速させているの
です。前傾姿勢のぶん股関節は屈曲位のため
大腰筋が力強くなる時期も早くなります。

大腰筋は第12胸椎・腰椎・大腿骨につながる
ので、脊柱の生理的湾曲が維持されている方
がパワフルに動きます。

このような大腰筋の巧みな使い方は「脊柱
生理的湾曲を維持した前傾姿勢」と「股関節
の最大伸展」というキプチョゲ選手の2つの
特徴が合わさって可能になまりす。


■大腿直筋の素早い動き
股関節屈曲筋で大腰筋の次に力のある大腿
も屈曲初期は力が弱いのですが、大腰筋と
同じようなしくみで素早く動きださせていま
す。


■接地期直前の内転筋群の伸展作用増加
次は前方に振り戻した脚が着地に向けて振り
下ろされる時期(遊脚終期)になります。
太ももは最も前方に振り出した位置から反転
し、後下方へ動き始めます(股関節の伸展)。
股関節屈曲位からの伸展なので股関節伸筋群
の中でも特に裏もものハムストリングが働く
時期ですが、股関節を深く屈曲すると股関節
内転筋群も伸展作用をもちます。
前傾姿勢では、骨盤が前傾したぶん股関節の
屈曲角度が増加するため、前方に振り出した
脚を地面に向けて振り下ろす初期(地面を踏
ん張る直前:遊脚終期)に、ハムストリング
などの股関節伸展筋の力に加えて、股関節を
伸展する力が強まった内転筋群(特に大内転
筋)の力も使うことができます。


■体幹部の安定
「脊柱の生理的湾曲を維持した前傾姿勢」は
腹横筋や多裂筋や骨盤底筋群など体幹のイン
ナーマッスルのコントロール力が必要です。
同時に「生理的湾曲を維持した前傾姿勢」に
なることによって腹横筋筋や骨底筋
などの体幹のインナーマッスルに力が入れ
やすくなる面もあります。
「脊柱の生理的湾曲姿勢」は体幹が少ない力
で安定し、体幹にしなやかさと力強さをもた
らします。



■脊柱の良好な可動性
肩甲骨の良好な可動性
前傾姿勢であっても、腰や背中を反ったり丸
めたり首の後ろを縮めたりして、脊柱の生理
的湾曲が崩れてしまうと、体幹や肩甲骨の動
きが悪くなってしまいます。
キプチョゲ選手は脊柱の生理的湾曲を維持し
た前傾姿勢なので、背骨や肩甲骨をしなやか
に大きく動かせています。


■効率的な呼吸運動
背中や腰を反ったり丸めたりして脊柱の生理
的湾曲が崩れると、肋椎関節(背骨と肋骨の
関節)や横隔膜の動きが悪くなり呼吸が浅く
なります。
キプチョゲ選手がレース後半も脊柱の生理的
湾曲を維持した前傾姿勢でいられることは、
呼吸にも非常に良い効果をもたらしています


■身体の軸と頭部の重心が交差
頭部の重心は背骨のてっぺんで頭を支えてい
る環椎後頭関節(第1頚椎と後頭骨の関節)より
前方にあります。
そのため頭が前方に倒れないように後頚部の
筋肉が常に軽く力を入れて頭部の重さを支え
ています。


 ※頭部の重心について 以前の投稿
 (環椎後頭関節と頭部の重心の解説あり)


しかしランニングでは身体の上下動や着地の
衝撃で頭部がぶれないようするために、普段
より強い力で頭部を支える必要があります。
生理的湾曲を維持した前傾姿勢では、前傾
身体の軸と頭部の重心が重なるため、頭部
のブレが減少し頭を支える力が少なくて済み
ます。
頭を支えるために首に力が入りすぎると、全
身に無駄な力が入る原因になります。

また、生理的湾曲を維持した前傾姿勢の軸と
頭部の重心が重なると、頭の重さを地面に伝
えやすくなり、地面を踏ん張る力が増えます
下の写真参照
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手ランニングフォーム分析 その2 『生理的湾曲を維持した前傾姿勢から生みだされる速く走る技術』_e0284739_14471742.jpg


今回はキプチョゲ選手が駆使する様々なラン
ニング技術の中から、「生理的湾曲を維持
した前傾姿勢」によって可能になる技術に焦
点を絞って解説しました。

これらの技術は「その部分」だけを切り取っ
て真似ることは出来ません。
なぜなら、「生理的湾曲を維持した前傾姿勢
」というベースや「直前の動作の技術」と密
接に繋がっているからです。


次回以降はキプチョゲ選手のランニング技術
を部位ごとに解説します。
次回は「体幹の動かし方」を予定しています。








  (2【背骨の湾曲】と 3【背骨の歴史】に
   生理的湾曲についての解説)




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大阪 梅田の
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関節の歪み・筋肉の癖・身体の使い方の癖
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# by granspace | 2022-07-23 01:33 | Trackback

現マラソン世界記録 キプチョゲ選手のランニングフォーム分析 その1 姿勢と骨格の特徴

現マラソン世界記録のエリウド・キプチョゲ
選手(ケニア)[2時間01分39秒]のランニング
フォームについて、独自の視点で様々な角度
から詳しく紐解いていきます。


キプチョゲ選手は5000m競争でもオリンピ
ックメダリストでしたが、2013年にマラソ
ンに転向しリオオリンピックと東京オリン
ピックの2大会連続で金メダルを獲得。
2018年のロンドンマラソンでは史上初の2
時間1分台(2時間01分39秒)で優勝し、現在
の世界記録を樹立。
2019年にはキプチョゲ選手がマラソン史上
初の2時間切りに挑戦するために開催された
「INEOS 1:59Challenge」
で1時間59分40秒をマーク。
(特別イベントのため記録としては非公認)
出場した14回のレースは優勝12回、2位1回
という驚異的な速さのランナーです。

更に凄いのはゴール直後も息を切らさない
で、まるで歩いてきたみたいな呼吸をして
いることです。

キプチョゲ選手は非常に美しく無駄のない
ランニングフォームで走ります。
その美しいフォームは速く走るために計算
された様々な工夫とテクニックの塊で、一
瞬ごとに細部まで全ての動き・角度・タイ
ミングに意味があります。

前進する力を生み出す技術
その力をロスなく使う技術
身体を速く動かす技術 

速く走るための様々なテクニックを、全身
の隅々まで意識の行き届いた見事な身体コ
ントロールで次々に繰り出します。


当ブログでは今回から数回程度の予定で、
キプチョゲ選手のランニングフォームや速
く走る技術について、足の筋肉や関節の動
かし方・体幹の筋肉や関節の動かし方・腕
と肩甲骨の動かし方・呼吸運動・姿勢や骨
格の特徴などを詳しく解説します。

初回の今回は
キプチョゲ選手のランニング時の姿勢と骨
格の特徴について解説します。
部位ごとの動きについては次回以後です。


「Eliud Kipchoge Running Form ①」
現マラソン世界記録 キプチョゲ選手のランニングフォーム分析 その1 姿勢と骨格の特徴_e0284739_16552487.jpg

【キプチョゲ選手の骨格や姿勢の特徴】

1 背骨と骨盤の きれいな生理的湾曲

人間の背骨は進化の過程で背骨の3カ所で緩
やかに湾曲する構造になりました。
(骨盤のカーブを含むと4カ所)
この背骨の湾曲を生理的湾曲といいます。

カーブが連なる背骨の構造で強度を確保でき
たことで、人間は重力下で重い頭を支えて継
続的な直立歩行ができるようになりました。

姿勢はこの背骨の生理的湾曲の角度で決まり
ます。

背骨の生理的湾曲がきれいに保たれている
状態が、機能的に身体が動かしやすい状態
です。
力が入れやすく、軽く、しなやかに身体が
動きます。

ねこ背・反り腰・側弯や捻じれなど、姿勢
に癖や歪みがある状態は、背骨の生理的湾
曲が崩れた状態でもあり、身体の動かしや
すさは低下してしまいます。
余分に力が必要になったり、身体が硬くな
ったり、バランスが悪くなったりするので
疲労も早まります。

多くのランナーのランニングフォームは背
骨の生理的湾曲が崩れてしまっています。
これには普段の姿勢由来の問題とランニン
グフォームの問題があります。

生理的湾曲が崩れた姿勢-フォームだと筋
力を上手く発揮できなかったり、床反力
(地面を踏ん張る時に地面から押し返され
る力)をロスしてしまいます。
折角厳しいトレーニングを積み重ねても
、姿勢が悪く生理的湾曲が崩れたフォー
ムでは効率よく身体を動かすことが出来
ないためパフォーマンスは低下します。

キプチョゲ選手のランニングフォームは
非常にきれいに生理的湾曲が維持されて
います。

キプチョゲ選手は身体を前傾させながら背
骨の生理的湾曲も維持できているのですが
、これはどういうことかというと。

生理的湾曲を保った正しい直立姿勢のまま
、足首で足首から上の身体全体をそのまま
前に倒す。
と考えるとイメージしやすいです。
この状態から視線の水平を保つために頭
は水平位に戻します。
(頭の動かし方と前傾については後述)

厳密にいうと前傾姿勢のために前に行き過
ぎた頭を少し後ろに戻して支えやすくする
ために、上位胸椎をわずかに伸展していま
す。(肩甲骨の上半分くらいの高さにある
背骨〔第1胸椎~第4胸椎〕をわずかに後ろ
に反らして起こす)

普通は胸椎を伸展する(起こす)場合、下位
胸椎(肩甲骨より下、背中の真ん中辺り)で
伸展してしまいがちです。
そうすると背中が張って体幹の動きが硬く
なりストライドが狭くなってしまいます。

トップアスリートでも多くのランナーが首
(頚椎)や背中(下位胸椎)や腰(腰椎)で背骨
を起こしているために、背骨の生理的湾曲
(本来の曲線構造)が崩れてしまっています。
その結果、全身に無駄な力が入ったり力の
ロスが発生します。
(それぞれのフォームに理由があるので、
一括りによくないとはいえません)

キプチョゲ選手は前傾姿勢で前に行き過ぎ
た頭の位置を、首でも背中でも腰でもなく
上位胸椎という絶妙な高さのわずかな伸展
動作で修正できているので背骨の生理的湾
曲を崩していません。
背骨のコントロールが非常に上手いです。

背骨の生理的湾曲を崩さない背骨のコント
ロールの上手さが、キプチョゲ選手の速く
走るための様々な技術を根底で支えている
のです

(上位胸椎のわずかな伸展の角度はレースに
よって違って見えます。これはフォーム改
善による変更かコンディションによる修正
かもしれません。)


生理的湾曲が崩れてしまう原因として、身
体の使い方の癖・姿勢の癖・長期間の同じ
姿勢や作業の繰り返し・怪我によるアンバ
ランス・誤ったトレーニングなどがありま
す。

キプチョゲ選手はトレーニングにおいても
、むやみに姿勢が崩れるような負荷をかけ
たりせず、正しい姿勢を保ちながらトレー
ニングしていると思われます。

背骨が本来のきれいな生理的湾曲の状態で
いるためには、腹横筋・横隔膜・多裂筋・
骨盤底筋群なと体幹のコア(深層)の筋肉に
よって小さな力で正確に骨盤や背骨をコン
トロールできることや、背骨や骨盤を歪め
る力を入れないことが必要です。
単に体幹の筋トレをすればよいわけではあ
りません。

背骨の生理的湾曲について詳しくは以前の
中段の 3、背骨の歴史 をご覧ください。



2 大きな胸郭
キプチョゲ選手は大きな胸郭も特徴的です。
胸郭とは肺や心臓を守っている肋骨と胸骨
と背骨でできた骨格部分です。
細い身体に対して胸郭の大きさがアンバラ
ンスに見える時もあります。
大きな胸郭は大きな呼吸運動を可能にしま
す。

胸郭の大きさは生まれつきの肋骨の長さだ
けで決まるのではなく、肋骨や背骨の使い
方によって変わります。
キプチョゲ選手の胸郭の大きさはレースに
よって変わって見えるので、先天的な肋骨
の長さよりも仕上がり具合によるところが
大きいようです。

キプチョゲ選手がフルマラソン史上初の
2時間切りに挑戦するために行われた
「INEOS 1:59Challenge」
で1時間59分40秒(特別イベントのため非
公認記録)でゴールしたときのキプチョゲ
選手は特に胸郭が大きく見えます。

キプチョゲ選手の呼吸については
『キプチョゲ選手のランニングフォーム 
呼吸編』で詳しく解説します。


3 筋肉 細い前腿と下腿
キプチョゲ選手はマラソン選手の中でも
一際細いです。特に前腿とふくらはぎの
細さが特徴的です。

大腿部は前もも中央の大腿四頭筋の直筋
と中間広筋が特に細く、大腿外側の外側
広筋は発達しています。

大腿後面のハムストリング筋群は一見する
と細く見えますが中間部でしっかり膨隆し
ています。
ハムストリングは膝を曲げる動き(膝関節
の屈曲)や太ももを後ろに動かす動き(股関
節の伸展)で働きます。

キプチョゲ選手のフォームの大きな特徴で
もある「軸足を大きく後ろへ動かす動き(
股関節の伸展)」は大殿筋だけでなくハムス
トリングも上手く使えています。

ふくらはぎが細いのは足首から下の足部の
様々な筋肉を上手くコントロールできてい
るからです。
ふくらはぎを使い過ぎない走りができます。

外見からはわかりませんが軸足を離地後に
前方に戻す速さから大腰筋が発達がしてい
ることが想像できますが、筋力だけでなく
様々な工夫と巧みな身体のコントロールが
足の動きの速さを可能にしています。

足の筋肉や関節の動きについては
『キプチョゲ選手のランニングフォーム 
足の動き編』で詳しく解説します。

大殿筋が発達しています。大殿筋は太腿
を後ろに動かす(股関節の伸展)筋肉です。
ストライド(2歩の長さ)を大きくするには
軸足を大きく後ろに動かすこと(股関節の
伸展)が重要になります。

腹筋群は前面の腹直筋だけでなく側面も
しっかりしていることから、腹斜筋や腹
横筋など体幹を安定させる筋肉も発達し
ていることがわかります。

体幹部の動かし方については
『キプチョゲ選手のランニングフォーム 
体幹編』で詳しく解説します。

肩甲骨や肩関節を動かす筋肉が発達して
います。
三角筋・僧帽筋・ローテーターカフ筋群
・大胸筋外側などが発達しています。

肩甲骨や腕の動かし方については
『キプチョゲ選手のランニングフォーム 
肩甲骨・上肢編』で詳しく解説します。


4 前傾姿勢
身体を前傾させることで前方への推進力が
増加します。多くのランナーのフォームは
10度前後の前傾姿勢ですが、キプチョゲ
手は約20度の前傾姿勢を維持します。

前傾すると背骨と骨盤の生理的湾曲を維持
するのは難しくなるのですが、キプチョゲ
選手は約20度前傾しても生理的湾曲をきれ
いに維持しています。
これは背骨や骨盤の位置や角度について明
確な意識をもって細かくコントロールして
いるからできることです。

前傾姿勢では頸椎を体幹部よりも過剰に前
傾させてしまったり、逆に第3~第4頸椎
で過剰に伸展してしまったりして、頸椎の
生理的湾曲が崩れやすくなります。
そのような頚椎の状態はトップアスリート
でもよくみられます。


キプチョゲ選手は頸椎を起こし過ぎること
も前傾し過ぎることもなく、体幹部と同じ
前傾角度を保ち、環椎後頭関節(頭と第1
頸椎の関節)で軽い力で頭の水平を保って
います。首の後ろを縮めていません。

後頚部に力が入りすぎると全身に無駄な力
が入ってしまいます。

環椎後頭関節について詳しくは以前投に稿
した
をご覧ください。

現マラソン世界記録 キプチョゲ選手のランニングフォーム分析 その1 姿勢と骨格の特徴_e0284739_16033526.jpg
■トレーニング中の姿勢の重要性

どんなにハードなトレーニングや科学的な
トレーニングでも、正しい姿勢が保てない
強すぎる負荷を掛けたり、姿勢に対する意
識が足りないと、
「筋力はアップしても姿勢が歪んでいく」
といったマイナス面もつくってしまいます。

今の自分ができる範囲内でなるべく正しい
姿勢でトレーニングする意識が大切です。

正しい姿勢を知る・自分の姿勢の問題点を
知ることも重要になります。

これは全ての種目のスポーツにおいて言え
ることですが、その種目に特化したトレー
ニングだけでなく、先ず基礎として姿勢改
善のための正しいプログラムを取り入れる
ことが出来れば、力のロスが少なく効率的
に身体を動かすことができるようになり、
パフォーマンスがアップし怪我のリスクも
減らすことができます。



次回は

キプチョゲ選手のランニングフォーム『体幹の動き』
は次々回に変更します。 



【今回の内容に関連する当ブログの記事へのリンク】







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現マラソン世界記録 キプチョゲ選手のランニングフォーム分析 その1 姿勢と骨格の特徴_e0284739_19155205.jpg













# by granspace | 2021-12-19 00:05 | Trackback

「新学期が始まる前に(いじめや嫌がらせを受けている方へ、命を大切に)」

「新学期が始まる前に(いじめや嫌がらせを受けている方へ、命を大切に)」_e0284739_22103988.jpg
※この投稿は2019年8月に投稿した内容に、
 加筆編集したものです。

新学期が始まる9月1日は、1年でいちばん自殺が
多い日だそうです。

学校や職場でいじめや嫌がらせを受けたり、生き
辛さに苦しんでいる方がおられたら、人間だから
精神的に限界な時は休息が必要な時もあるから、
休んでもいいから死なないでください。

いつかその苦しみの経験が、あなたの糧となり、
あなたの輝きを爆発させる時が来ますように。

生きていれば、あなたは他に苦しんでいる人を
たくさん助ける人になるかもしれません。


学校や職場、周囲の人から継続的に酷いいじめや
嫌がらせ、パワハラ、モラハラを受けている場合、

その環境を離れる事が可能なら、
離れた方がいいです。


そういう事をする加害者は、自己愛性パーソナリ
ティ障害を抱えていることが多く、非常に未熟で
不安定な自我を満たすために、いじめやすくて何
か気に食わない人をターゲットにして執拗に攻撃
します。
そして自分の行為を正当化するバイアスがかかっ
ているので、「自分が加害者」という自分にとっ
て都合の悪い現実や責任を受け止められずに事実
を無視していまいます。
本当の自分と向き合えない人です。

自分がしている、いじめ・嫌がらせ・ハラスメン
トに、自分に都合よく理由をつけて自己正当化し
てしまうのです。
酷いことをしているという「自分に都合の悪い現
」を受け止めることがないので、平気でいられ
るのです。

そういう人が加害者の場合、被害者が少しでも抗
議したり、抗議的態度を取ったり、嫌がらせをか
わしたりすると、まるで自分が被害を受けたかの
ように錯覚を起こして怒り、逆切れして更に嫌が
らせをします。
加害者が自己愛性パーソナリティ障害の場合、い
つか自分のしている愚かな行為に罪悪感を感じら
れるようになって反省したり、根本的に行動が改
善されるという事は無いです。
だから、そういう人に対していつか変わってくれ
ることを期待して何年も耐え忍んでも無駄なので
、もし可能ならば速やかに離れた方がいいです。


もしも、あなたがよってたかって複数の人や団体
、集団ストーカーから嫌がらせを受けたり、いじ
められている環境から離れられない状況なら、集
中力が必要な作業(例えば絵を描く、読書、音楽や
映画鑑賞、演奏、スポーツ、ダンス、ヨガなど)を
したり、お笑いを観る、など、少しでも嫌なこと
を忘れる(薄める)時間を作ることも脳や身体の休
息になります。

あなたは、よってたかって抵抗できない人を
痛めつけて喜ぶ加害者側の人間ではなく、
まともな心を持った人間であることに
誇りを持って生きてください。





中島みゆきさん 『FIGHT』 より
ファイト!戦う君の唄を
戦わない奴らが笑うだろう
ファイト!冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ


中島みゆきさん  『時代』 より
今はこんなに悲しくて
涙もかれ果てて
もう二度と笑顔には なれそうもないけど
そんな時代もあったねと
いつか話せる日がくるわ
あんな時代もあったねと
きっと笑って話せるわ
だから 今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう




※中島みゆきさんの歌詞は、私の個人的解釈で
 すが、温かな励ましや声援、寄り添いの言葉
 として掲載させていただきました。

 時が経っても笑って話せるはなしではない
 つらい経験をされている方も、いつか笑顔を
 取り戻すことができますように。
 

いのちの電話
0570-783-556
(午前10時~午後10時)


※次回は
 東京オリンピック 男子マラソン 金メダル、
 現マラソン世界記録保持者のキプチョゲ選手
 (Eliud Kipchoge)のランニングフォーム分析
 です。
 様々な観点から特徴を探り、速さの理由を解説
 します。


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# by granspace | 2021-08-29 13:37 | Trackback

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